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「俺、いつもチームのみんなに足を貸してもらっているので、休み期間に施術できる人なんていません! どうすればいいですか?」
そう戸部君が言い切ると、先生が困り果てた表情に変わった。
確かにそういう理由があったから、私たちのチームは自主練を多く行っている。
夏休みとなれば、チームで顔を合わせることもない。
そうなると、戸部君がこの課題レポートをクリアするのは困難だと思う。
「どうしようかしら……」
先生が珍しく弱気な発言を呟くと、教室が一気に静かになった。
何かいい案がないか考えていると、後ろの席の入来ちゃんが、小さな声でボソッとアイデアを囁いた。
上手く聞き取れなくて、後ろを振り返ろうとした瞬間に、飛び跳ねるように戸部君が反応する。
「それいいね! 入来ちゃんナイスアイデア! ね、ナオちゃんもそう思うよね!」
「ごめん、聞き取れなかった。入来ちゃんなんて言ったの?」
「え? えーと……」
「だ・か・ら! 入来ちゃんが合宿やろってさ!」
入来ちゃんが声にするのを恥ずかしがっていると、戸部君が先に答え出した。
クラスが静まり返っている中でのチーム会議は、恥ずかしさを感じるに決まっている。
それにしても、入来ちゃんの言う合宿とは、どういうのを想像しているのか。
今、私たちチームが浮いていることはさておいて、このトークを進めて行かないと。
「はい、そこまでにしてください。そうね、そちらのチームで何か解決策を考えていただきましょう」
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