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先生に話を止められると、そのまま座学の授業に進んで行ってしまった。
合宿のことが気になり過ぎて、授業に集中ができない。
でもそれは悪い予感ではなく、むしろ良い予感がする。
合宿というワードが、私のモヤモヤを緩和してくれそうな気がして。
無の状態でも、板書をノートに書き写すことはできる。
もちろん、内容は一切理解していない。
早く授業が終わって、みんなと合宿の話を進めなければ。
とにかく今は、楽しい話をして気を紛らわせたい。
「それで、さっき入来ちゃんが言ってたことだけど」
授業終わりの合図であるチャイムが、まだ鳴り終わっていない中でも、構わず戸部君が話を始めた。
よっぽど話したかった内容らしいけど、あまりの早さに教室を出る前の先生も苦笑いしている。
「合宿の話よね。入来ちゃん、どういうこと?」
この話は私も戸部君と同じくらい興味がある。
戸部君に追随する形で、合宿の話を広げてみた。
「戸部君に足を貸してあげたいなって思って、チームで旅行ついでの合宿なんてどうかな」
「それそれ! 入来ちゃん最高じゃん!」
そういえば、花火大会の時は入来ちゃんのアシストに尽力するつもりだったのに、逆に迷惑をかけた形になってしまった。
もう一度、今度こそちゃんと二人の距離を近づけないと。
懺悔の気持ちと、自分自身の気を紛らすためにも、入来ちゃんの話に快く賛成するしか選択肢はない。
「うん、私も行きたい!」
「マジ!? ナオちゃん乗らなそうだなって思ってたのに!」
「どういう意味よ。私そんなにノリ悪い?」
「いや、そういう意味じゃ……」
冗談を交えて会話している戸部君は、花火大会の時の戸部君とはまるで別人のように感じる。
私を叱ってくれた、あの覇気のある戸部君はここにはいない。
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