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入来ちゃんが話をまとめてくれると、すぐさまスマホを取り出した。
何のサイトを見ているか覗いてみると、都内からでも簡単に行ける温泉スポットを検索していた。
鬼怒川、箱根、草津と、どこも楽しめそうな場所だらけ。
熱い討論を交わした結果、旅行先は戸部君がまだ行ったことのない、熱海に決定した。
「良かったバイト代貯めておいて。俺、旅行久しぶりだから超楽しみだよ」
嬉しそうな顔をしながら、すでに予約をしたホテルのサイトを眺めている。
入来ちゃんの方に目をやると、顔がほころんでいる戸部君を見つめていた。
今度こそ絶対に、キューピッドとして役割を果たさないと。
「じゃあ、次に会う時は旅行の時だね! 二人共、体調を崩さないように!」
戸部君の爽やかな声で、私たちのチームは解散した。
この駅にまた来るのは、あと一週間後。
それまでは学校のことを忘れて、娯楽に興じるとしよう。
あとは、ユウキのことも。
ユウキがもし、あの女性と付き合っていたらなんて、考えても辛くなるだけだから。
今はとにかく、目の前の楽しいことだけ考えて生きていく。
そう決意してマンションの前に着くと、エントランスに人影があるのが見える。
ちょうどエントランスの電球が切れていてよく見えないけど、その人影は二人だろう。
自然に近づいてみると、一人は車イスに乗っている。
ということは、もしや……。
「あ、ナオ……」
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