夏休みは合宿に

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 私の質問に答えたくなかったのか、下を向きながら数秒黙り込んでしまった。  急かしたい私の気持ちを、抑え込むことはできない。  もう一度どうなのか聞き直そうとした時、委縮した声でユウキが返事をしてくれた。 「……そうだよ」  薄暗い中に響いた、力が抜けたような声。  その答えは、私の人生を大きく左右する気がした。  肩に、見えない錘がのしかかった気分だ。   「そうなんだ……」  その後は何を会話したか、あまり記憶がない。  他愛もない会話をしながら、エレベーターに乗った気がする。  ただ一つ覚えていた感情は、後悔。  もっと早く、この恋に気づいていれば。  気づいた段階で、すぐに想いを告げていれば。  もしかしたら間に合っていたかもしれないのに。  そんなどうしようもない『たられば』を、何回も繰り返しながら、その夜は泣き腫らすことになった。  朝起きると、母が腫れている私の顔を見て大爆笑している。  何を言われても反応できない私に、気持ちを察したのか、温かい豚汁を作ってくれた。  一口すすると、胃から体全体に温かみが広がっていくのを感じる。  その優しさに、また大粒の涙が押し寄せてきた。   「何があったか知らないけどさ」  母は私に箱ティッシュを渡すと、テーブルに頬杖をつきながら、諭すように喋り出す。 「あなたの手で、人に温もりを伝えたいんでしょ? あなたの心が冷たい状態でどうするの。さっさと豚汁食べて、気持ち切り替えなさい」
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