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「花火大会の時ね、思い切って告白したの。ちょうどナオちゃんがどこかに行った時」
「あの時に?」
それは、私が二人きりになってほしくて、その場から消え去った時だ。
そして、偶然にもユウキと岸井さんを見つけてしまった時。
でもあの時は、戸部君がこっちに来てくれたはずなのに。
もしかして、私がいなくなったタイミングで、すぐに告白したってことかな。
だとしたら、入来ちゃんの積極性に感服せざるを得ない。
「でも、あっさり断られちゃった。好きな人がいるからって。あまりにも躊躇なく言うからさ、私笑っちゃって」
飄々と話す入来ちゃんの口ぶりは、失恋後というのを全く感じさせない。
むしろオモシロ話として扱っているようにも思える。
失恋ってこんなにライトなものなのか。どうやったらこんなに前向きになれるのだろうか。
ちょうど傷心中の私自身のために、入来ちゃんの感情を聞きたくなった。
「入来ちゃん、悲しくないの?」
「もちろん悲しいよ。でもそれを引きずって前に進めなかったら、時間が勿体ないじゃん」
「確かに、そうだね」
入来ちゃんは簡単に言うけど、私はそういう思考にはなれない。
どうしてもユウキのことを考えてしまうし、引きずってしまう。
もっと柔軟に考えられれば、入来ちゃんみたく気楽に恋ができるのに。
こればっかりは、入来ちゃんのことを尊敬するしかない。
まず振られた人と、合宿に行くこと自体が不思議に思える。
ひょっとして時代遅れなのか、私って……。
「あとね……わかったことがあるの」
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