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考え方を見直そうか心の中で悩んでいた時、入来ちゃんが水滴が垂れている天井を見ながら語り出した。
わかったこと? 入来ちゃんの失恋でわかったこととは、一体なんだろうか。
参考になりそうな答えを期待して、興味津々な顔で答えを促した。
「何? わかったことって?」
「たぶんだけど、戸部君の好きな人、ナオちゃんだと思う」
「……え」
恋愛において必要なものとか、失恋を乗り越える方法とか、そういう哲学的な答えを期待していたけど、全く予想していない内容だった。
何と言っていいかわからない私は、今度は自分自身の手で口を塞いでいる。
見かねた入来ちゃんが、笑みを含みながら話を続けてくれた。
「私が振られた瞬間ね、余韻もないままナオちゃんの心配をし始めたの。その切り替えの早さにも思わず笑っちゃって、ついナオちゃんを探してきてって言っちゃった」
「私のせいだね。私が余計な行動をしなければ……」
「違うの、それは逆にありがたかった。諦めつきやすかったし、戸部君の好きな人がナオちゃんだったら、私も嬉しいし」
「でも……」
流れのままに、あの花火大会のこと。そして、ユウキに彼女が出来たこと。
私の機能を停止させている元凶を、全て話した。
すっかりのぼせるくらいに入来ちゃんは聞き入ってくれて、裸のまま抱きしめてくれた。
もう何分も浸かっているこの大浴場で、友達の温もりを感じられるなんて。
入来ちゃんが『辛かったね』と一言こぼすと、少しずつ力が抜けて、気が楽になった。
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