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「それで、ナオちゃんは戸部君のことをどう思ってるの?」
「戸部君を? それは……」
前にホームセンターで買い物をした時に、戸部君が花火大会に誘ってくれた。
でもその時は深く考えずに、チームで行くことを提案した。入来ちゃんのために。
私に本気で気があるなんて思わなかったし、何よりユウキのことで頭がいっぱいだったから。
それが、まさか真剣に誘っていたなんて。
頭の中が、上手く整理できない。
「ナオちゃん、まだユウキ君が諦められないんでしょ」
「へ? いや、別に」
戸部君をどう思っているか考えている途中で、虚を突くような第二の質問が飛んでくる。
二つのアンサーを抱えた私は、余計に何を話していいかわからなくなった。
「やっぱり、図星なんだ。まあそれぐらい想い入れの強い人なんだよ。すぐには立ち直れないよね」
「入来ちゃん……」
表情だけで理解してくれた入来ちゃんを見ていると、とても入学式におどおどしていた人とは思えない。
内面はしっかり芯のある、頼りになる女の子だった。
「ナオちゃんがリフレクソロジーを志した理由は、まだ死んだわけではないでしょ? ユウキ君に彼女がいても、リフレクソロジストとして向き合えば良いじゃない」
「そうだよね。リフレクソロジストを目指した気持ちは、こんなに脆くないはず」
「そう。でもその生活の中で、また良いなって思う人がナオちゃんに現れたら、私は応援するよ。それが戸部君だったら尚更ね!」
「入来ちゃん、本当にありがとう。なんだかスーッとしたよ。戸部君をどう思っているかはまだわからないけど、とにかくリフレクソロジーに全力を注がなきゃね」
長風呂を終えた私たちは、噂の戸部君にかなり叱られた。
怒っている様子を二人でバカにしながら、食事をとって眠りにつく。
入来ちゃんの言葉と行動力に、大きく影響を受けた合宿となった。
傷ついて、癒されて。
生活の中で、心に傷を負った人を、癒せる物事はいっぱいある。
ご飯だったり、温泉だったり、友達だったり。
その中の一つに、リフレクソロジーというリラクセーションもある。
温かみを伝える方法の一つを、懸命に学べていることに喜びを感じよう。
短くて濃厚な夏休みが、また一層と、私を大人にした。
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