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先生と戸部君の会話から察すると、今日は老廃物の話をしているらしい。
慌ててテキストを見直してみると、そのページの中で”クリスタル”という単語が太字で記載されている。
体の中の老廃物は、尿や汗で体外に排出されるのが通常だけど、体内に残った老廃物は足裏に溜まることがある。
私たちはコリコリしたものと呼んでいたけど、どうやらその小石のような老廃物は、クリスタルという名前みたいだ。
「そうですね。戸部君の言う通り、老廃物のくせにクリスタルなんて綺麗な呼称、笑えますよね。ですが、このクリスタルは皆さんにとっても大事なものです」
まったく聞く気がなかった今日の授業が、一瞬にして興味の湧く内容となった。
本物のクリスタルでもないのに、私たちにとっても大事な理由って、どんな要素があるだろうか。
「これまでも、多くの足裏を施術してきましたね。実技の授業もそうですし、課題レポートの際もそうです。いろんな足を貸してもらったはず。様々な足裏のお疲れを、そのコリコリとした感触で判断していましたよね」
先生の言葉で、リフレクソロジーを始めた最初の頃を思い出す。
最初の実技の授業で、コリコリしたものを感じたら、それはお疲れの原因という風に教えられた。
その教えの通りに、コリコリした感触を探すことがリフレクソロジストの仕事だと思っていた。
でも、そのことについて深く考えたことはなかったけど……。
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