クリスタル

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「ナオさん、足のセラピストを目指しているそうね」  急に話題を変えて話を続けたので、即答できずにひるんでしまった。  リフレクソロジストを目指していることは、別に隠していないことなのに、岸井さんに聞かれると気持ち良く答えられない。 「はい、そうですけど……」 「それって、ユウキのため?」  気持ち良く答えられない理由、それはそうやって勘ぐられるのが怖いから。  ユウキのためにリフレクソロジストを志したなんて、彼女の目の前では言えない。  でも、岸井さんも薄々気づいているはずだ。  リフレクソロジストを志す理由に、ユウキがあるということを。  身近にユウキという存在がいなければ、リフレクソロジストになろうとは考えつかないだろうし。  私は岸井さんへの答えをゆっくり考えた後、正直に話すことにした。 「……まあ、そうでしたね。でも、ユウキには岸井さんがいますし、私は必要ないと思います。今は、素直にお疲れを抱える全ての人の役に立ちたいです」  そう告げると、岸井さんは心安らいだような表情に変わって、ひと呼吸置いた。  私は、これでいいんだと自分を無理に納得させたけど、とてもやり切れない気持ちが残っている。  悔しさと苦しさが入り混じる濁った思いを、余裕の顔つきという表面で覆う。  そんな私の顔を見ながら、話す言葉を見つけた岸井さんは、明るくなった声色でさらに答えた。 「良かった。ナオさんの大切な人を、私が取っちゃったみたいだったから。でも、もう安心した。ナオさんを必要としている人は、きっと沢山いるものね」
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