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容赦なく、ズバズバと私のハートを削ってくる。
一応強がりを言ったつもりだったけど、そんなの気にしていない岸井さんからは、思いつくままに意見を浴びせられた。
要約すると、ユウキは私に任せて、ナオちゃんは次に進んでと言われているようだ。
苦笑いをしながら歩いていると、ようやくマンションの目の前に到着した。
「ナオさん。私とユウキはね、今月末に行われる文化祭に出るの。ダンスサークルの催し物としてステージに上がるんだけど、ユウキはそれの練習で忙しいからさ、もう構わないであげてね」
顔は笑っているけど、目は全然笑っていない。
冷ややかな目つきで、私を牽制しているみたいに感じる。
さっきまでの話しっぷりで、ユウキと距離を取ってほしいというメッセージは伝わったのに、最後の最後でもう一度釘を刺してきた。
「わかってますよ……」
うんざりとした顔をなるべく出さないように意識したけど、実際はどう見えているかわからない。
私の表情を確認すると、岸井さんは再度微笑み顔を作り直して、軽やかに去っていった。
「何なのよ」
岸井さんの背中が小さくなったのを確認すると、抱えきれないストレスを我慢できずに、つい言葉にしてしまった。
同時に、ユウキに聞かれていたらどうしようという気持ちもこみ上げてきて、念のために周囲を見渡してみる。
もちろん誰もいるはずがなく、何をやっているんだろうという惨めさが、一気に押し寄せてきた。
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