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家に帰り、熱めのシャワーを浴びる。
頭を洗いながら目を瞑ると、早速さっきまで岸井さんと歩いていた情景を思い出した。
こんなにユウキのことを、考えたくなくなるなんて。
ユウキのことを考えると、必ず岸井さんの存在が頭を過ぎるようになった。
入来ちゃんから言われた通り、リフレクソロジストとしてだったら、まだユウキと向き合えると思っていたのに。
ユウキたちにとっては、それさえも大きなお世話なのかもしれない。
『好き』という感情が、霧の中に隠れていって、見えなくなった……。
ベッドに入っても、岸井さんとの会話が頭から離れることはなく、入眠するまでかなり時間がかかった。
「おはよう、ナオちゃん」
重たい瞼のままで今日も学校に着くと、相変わらず一番乗りの戸部君が挨拶をしてくれる。
私は寝不足を悟られないように、明るい声を意識して返事をする。
「戸部君おはよう。今日も早いね」
「まあね、昨日習った反射区のおさらいがしたくてさ」
純粋にリフレクソロジーを楽しんでいる戸部君を見ていると、何だか心が洗われるようだ。
本来、大学進学せずにこの養成学校に通い始めたのは、ユウキのため。
まさか半年で、こんなに複雑な関係になるとは思わなかった。
でも、ユウキに彼女ができてしまったのは事実。
ブレブレな気持ちのまま、中途半端に取り組んでいる自分が滑稽に思える。
目の前で真剣に取り組んでいる、戸部君に見せる顔がない。
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