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「にしても明るい街やなあ」
平吉は「ファ」の街並みをしげしげと眺めながら感想を口にした。
石版があるという「三重塔」の入口を目指すことになった平吉と架純。
しかし、彼らは塔の一階部分である屋敷から離れていた。
というのも、地区の隅にあるというワープゲートを目指しているのだ。
なんでも、参ノ国において地区間の移動はワープでのみ行っているという話だった。
各地区に設置されたワープゲートは二箇所。それらは上の地区と下の地区にそれぞれ繋がっている。
「三重塔」の入り口は最上階と最下階にあるため、石版を目指すにはどちらかのゲートに向かう必要があるわけだ。
平吉らはルーマ案内の元、近場である東のゲートを目指していた。
そのゲートは上の地区に繋がっている。奇しくも、李空らが潜ったのは西のゲート。それは下の地区に繋がっているため、調査班が合流するのは互いに石版に辿り着いた時になりそうだ。
「そうやんなあ。光はなくても、参ノ国は明るい。なんせ音楽の国やからなあ」
ルーマが得意げに言う。
平吉が抱いた感想「明るい」は、光度ではなく雰囲気の話だった。
ルーマが言うように、街には陽気な音楽が流れている。
すれ違う人の顔も、心なしか明るく見えた。
「そろそろ街を抜けるやんなあ」
ルーマの言葉に辺りを見渡せば、建物の数が段々と減ってきていた。
「それで。石版まで辿り着くにはどのくらいかかるんや」
何気ない調子で平吉が問う。
ワープがあるならさほど時間はかからないだろう、と踏んでの発言だった。
「そうやなあ・・」
ルーマは空中で何やら描くような仕草をした。
「3日。少なく見積もっても3日はかかるやんなあ」
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