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「やっぱりまたファに行ってたのか・・って、ミスターりくう?」
ゲートから姿を見せた者達の姿を眺め、男は目を丸くした。
しかし事前に得ていた情報から事態を察したのだろう、得心がいった様子で頷くと、「久しぶりだね!ミスターりくう!」と手を振った。
その男。フィート・ミ・アイデーのことを思い出した李空は、手を軽く挙げて応じた。
それから李空は、トーヤから聞き出せなかった参ノ国の情報をアイデーに尋ねた。
アイデーの回答は要領を得ていて分かりやすかった。チャラ男の印象が強かったが、どうやら根は真面目でしっかり者のようだ。
どうやら参ノ国代表内での評判も同じらしく、代表してトーヤを預かっているらしい。
トーヤの行動は予測不能であるため、アイデーはほとほと困っているそうだ。
「僕が言うのもなんだけど、参ノ国の代表は変人ばかりだからね!他の人に任せるわけにもいかないのさ」
アイデーは爽やかな笑みを浮かべて言った。
アイデーの話によると、李空らは「ファ」の一つ下の地区に当たる「ミ」に到着したようだ。
「三重塔」の石版を目指すには、後二つ下の地区まで行くことになりそうだ。
さて、正確な情報を得られたことで、李空、セイ、マテナは改めて方針を固めた。どうやら石版を目指すという方向で間違ってはいないようだ。
「一つ良いか?」
セイが口を開いた。
「何だい?」
アイデーがとっつきやすい笑みを浮かべて小首を傾げる。
セイは辺りを見回しながら尋ねた。
「見たところ、この近くにはゲートが一つしかないようだ。そしてこのゲートは上に繋がっている。下に行くにはどうするんだ」
なるほど、確かに辺りに他のゲートは見当たらない。
階段を想定するなら、上と下に続くゲートが二つ並んでいるのが普通だ。
「ああ、それね。実はゲートは各階の東と西に一つずつしかなくてね。東が一つ上の地区、西が一つ下の地区にそれぞれ繋がっているんだ。ちなみに東のゲートは上の階の西のゲートに、西のゲートは下の階の東のゲートに、それぞれ入れ子で繋がっているよ」
「・・というと、さらに下の地区に行くには、西のゲートまで移動する必要があるわけですね」
「ザッツライト!その通りだよ!」
マテナの呟きにアイデーがサムズアップで応える。
「これは長旅になりそうだな」
「だな」
李空とセイは顔を見合わせ、揃って長い息を吐いた。
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