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「何でそんな不便な造りやねん」
平吉は不満の混じった声色で言った。
ルーマの案内で「ファ」の東ゲートまでやってきた平吉と架純。そこでワープの仕組みを知ったのだ。
初めて聞いた時は何かの冗談と思えたルーマが提示した三日間という期間も、今なら妥当に思えた。
「それは俺たちも常々思ってるやんなあ。けど、新しくゲートを開くことはできないやんなあ」
ルーマの話によると、同じ階に3つ以上のゲートを開くことはできないそうだ。なんでも、3つ目を開いた暁には未知の場所と繋がってしまい、潜ったら最後、二度と帰っては来れないらしい。
実際のところは分からないが参ノ国では有名な話であり、新たにゲートを開こうとすれば反対する者が多数現れるそうだ。
元より参ノ国の生活は各地区で完結しており、上下の地区に移動する機会も少ないため、今日までワープ周りの仕組みが改善されることはなかった。
ワープ面が便利になれば地区間の交流も増えるだろうが、交流がないため便利になることもない。
こうして硬直状態のまま今日まで来たというわけだ。
「無いものを嘆いてもしょうがないでありんす。さあ、行くでありんすよ」
「まあ、そうやな」
効率を重視する自分の性格とのギャップに嫌悪感を抱きつつも、架純に説得され平吉は渋々ゲートを潜った。
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