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第一話・眠れないッ!!
――眠れない。
鈴虫やコオロギも鳴いている少し肌寒い夜。
暑苦しい季節は過ぎ、過ごしやすい秋を迎えた。
眠るにはうってつけの気温だし、虫の音が心地いい。
それなのに……僕は眠れない日々を送っている。
いや、眠ることはそれなりにできる。
だけどなんていうか、僕の耳にはずっと虫の音が聞こえている。
これってものすごく眠りが浅いっていうことだ。
さっきまで目をつむって、うつら、うつら、としていたにも関わらず、僕の頭はもう覚醒してしまっている。
ふと、頭上に置いているめざまし時計を見る。
……ああ、まだ1時になったばかりだ。
たしかベッドに入ったのが0時。
まだ1時間しか経っていない。明日も学校がある。
早く眠らなければ!!
そう思えば思うほど、僕の思いとは裏腹に、頭はよけいに冴えてくる。
『心臓に近い方を下にして、横向きに寝れば眠りやすくなる』
『足の間に柔らかいクッションを挟んで眠るのも安心できて安眠の効果がある』
たしか健康番組でなんとかの専門家がそう言っていたっけ……。
そのことを思い出し、僕は寝返りをうって布団の切れ端を太腿に挟んでみる。
多少、寝やすくなったかもしれないけど、結果は同じ。
シーツは少し冷えているくらいでやっぱり眠気はやって来ない。
僕は中山 海里。
青空学園高校に通う2年。家族は父さんと母さん、自分を入れて3人。
父さんと母さんは共働きをしているけれど、それはみんなも同じだと思う。
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