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トワの村
『アト!お前んち、でっかいなー!』
「声がでかい。」
『他の人間には、聞こえてないよ。200年前のレオの嫁に、話を聞くんだろう?』
「人間は、100年すら生きていられない。」
トワの村に着いた俺たちは、ニコの透明になる能力で1日かけてひと周りした。
村の地図をニコに覚えてもらうのと、透明能力がどこまで通用するのかの試しでもある。
気配まで透明になるようで安心した。
作戦を練るため、トワの村から1日分の距離を後退する。
トワの戦士は気配に敏感だからだ。このぐらい離れいて、気配を消していれば、大丈夫だろう。
枝を使って地面に村の地図を描く。
『人間って器用だな』
山脈に囲まれ、円形に獣避けの頑丈な、木製の壁が巡らされ、北の山を背にして村長の小屋、東側に村長の嫁家族の小屋。西側に神殿がある。壁に近い東西南北に、戦士の屯所(とんしょ)が設置されている。
村長の小屋の南側には大きな広場があり、南門まで北南を突っ切る大通りが。大通りを挟んで東西に村民の小屋と、西側に共同の炊事場や1本の川が流れ、洗濯場もある。
基本的に狩猟で成り立つが、他の村に行くための拠点として宿屋があったり、民芸品や織物などを売っている。
「最終的に「伝承の水晶」の、厄神についての記録を書き換える。」村長の小屋を枝で指す。
『でんしょうのすいしょう?』
トワの村には、霊力を使って過去の出来事を、水晶に記録する「伝承の水晶」が存在する。この透明な水晶は特別で、記録された出来事は、トワの村人全員に「記憶」として共有される。
『?なんで村人で共有すんの?』
「犯罪者の容姿や名前などを、共有していればすぐ捕まえられるし、お尋ね者なども南門で止められて、結構便利なんだ。それに「レオ」はトワの村でしか現れない。家系にこだわらず、村のどこで生まれるかも分からないんだ。「レオ」の伝承を共有していれば、生まれたレオを「レオ」として早めに鍛えられる。」
『アトもそうだった?』
「俺は3つから「レオ」として鍛えられた。」
毎日体力作りや剣の鍛錬に基礎知識、様々な気配の察知、森での野営知識など叩き込まれたな。
5つだったか、初めてカムイを持たされた。白い刃が美しいと…まさか彼女の骨だとは思わなかったが…
『フーン…水晶の記録書き換えって、できるの?』
「村長の血筋ならできる。俺がそうだ。」
『!だからあんな家がデカかったのかー』
「村長の小屋の半分は「伝承の水晶」の部屋で、居住部分は見た目より狭いな。」
『えっ水晶ってそんなにデカいの?』
「水晶自体は俺の拳ぐらいだ。部屋には仕掛けや罠がある。全部覚えているから大丈夫だ。」
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