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ニコと作戦会議
「最初に着手したいのは、3代目レオの謎解きだろう。」
『3代目の記憶がある人間っていないの?』
「難しいな…水晶に記録しなかったほど、隠しておきたい出来事や捏造したという事実を、残す事はしないだろう。しかも200年という時がたってしまっているし…戦場に現れたという、3代目の婚約者の線からたどれるか…確か子孫が神官だったか。」
『3代目の嫁ゆかりの品、みたいなものはないの?』
「あったとして、どうするんだ?」
『物の記憶を見る事ができるよ。どーだ!凄いだろ?』
…固いであろう神官の口を、脅して割らせなくても、確実に真実を知ることができる。
「凄いな。同行してもらって大正解だ。」
『…天界で嫌がらせを回避するために、必要だったからな…』
透明になる能力も…いや今は考えずにいよう。
「なら、この髪飾りだな。3代目の子孫に、受け継がれている可能性が高い。」
『婚約者の髪飾りか。で、この神殿に乗り込むの?』葉で地面に描いた神殿を指す。
「子孫は神官という所までしか、知らないんだ。受け継がれているのが誰か…」
『んー髪飾りって、アトのと同じ植物でできてる?』
「この赤いムヌホの実は、必ず飾るな。」
『なら村全体を一度に探索できるよ。植物の声は聞きやすいから。アトの髪飾り貸して。』
「あ…ああ。」
『探索中は、透明になれないけどいい?』
「…問題ない。」
ムヌホの実を、葉で挟んで光る。
なんだこの万能さは。結構上位の精霊なのか。
天界でクアを守るため、奮闘しているニコを想像して…大幅に見直す。
『決まったね。急ごう!行くぞ。』
「待て。なんの策もなしに、突っ込むのは危険だ。他の人間に察知されたくない。」
『えー、じゃあどーすんのさ。』
百合のような形の、白い花の頭がぷくーと膨れる。くっ、なんだそれは。
『なんだよ。急に笑い出して』
「ちょ…ちょっと待ってくれ…ぶはっ!」ますます膨れる白い花に、笑い出してしまう。いつぶりだろう、笑ったのは…
クアが可愛がる理由が、分かった気がした。
早朝。
ニコの能力は他にもたくさんあった。大神にクアのそばにいたいと願った時、望んで授けてもらったらしい。どれもクアのために考えられた能力だった。そわそわ緊張しているニコに、1つだけ注意していおく。
「万が一失敗した場合、どうやってもいいから1人で逃げろ。」
『アトは?』
「俺は捕まっても殺されない。ニコは精霊だろ?村には精霊を、無理やり従わせる術を持った者がいる。だから、俺に構わず逃げろ。」
『…たぶん大丈夫だと思うけど…分かった』納得してないな。
手順を再度確かめる。
ニコが先発、鳥の背に乗って上空から村ごと探索し、3代目の婚約者の髪飾りを持った人物を特定。位置が判明次第、俺と合流して、トワの村へ透明になって侵入する。気を失わせてから、特定した人物ごと透明にして村の外へ行き、髪飾りから記憶をニコに読んでもらう。
「準備はできたか?相棒」
『いいぞ!…あいぼうってなんだ?』
「1つの目的を隣に並び立ち、信頼をもってして成し遂げる者同士のことだ。」
『じゃあニコにとっても、アトは相棒?』
「そうだ。」
『ふふっ。アトは面白いことを言うな。』
「さっき言った逃げる話、忘れるなよ。」
『分かった。相棒!』
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