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大神
「嫌だ…」ひゅうと俺の顔を風がなぜていく。
「嫌だ!!…清めをクアばかりに押し付けて!他の神は何をしている?答えろ!!なぜ彼女が消えねばならない?!」
冷たくなっていく彼女を抱く俺の周りを、風が渦巻いていく。
『レオ!この風…っ?!』首に絡みついていたニコが絶句する。
「君が今世の「レオ」か…」
目の前に黄金色の髪をした男が現れ、俺の目を覗き込んでくる。今まで感じたことのない大きな気配。威圧感はないが、力の底が感じられない。
『大神!!』激しくなる暴風の中、ニコが叫んだ。
大神…ニコの話に出てきた、上位の神?
「まぁ、そうだな。…クアを助けたいか?」
俺は頷(うなず)く。
「君たちが言う厄神だぞ?いいのか?」
「はい。」そんなもの何度も…何度も自分に問いかけてきた。
「君の寿命を、半分使うがいいか?」
「彼女を失いたくない…」真っ直ぐ大神の、七色の瞳を見る。
「分かった。」
俺の胸のあたりから、赤い丸いものを取り出す。
「ぐぅ!!」激痛に顔が歪む。
「女神の命をかけた呪(しゅ)は厄介でな。どう対抗するのか見せてもらおう。」
そう言うと赤い球体を真っ二つに割った。
「うぐぅぅ!!!」更なる激痛に気が遠のく。1つを彼女に、1つを俺に戻すと男はすーと消えていった。
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