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序章
初めまして。大神(おおきみ)の補佐をしております、アクトと申します。
僭越(せんえつ)ながら私(わたくし)めが、物語にスパイスを加えようと思いまして、紳士・淑女の皆様の御前に参りました。少しお時間いただきますよ。
夜空に輝く星にも、生と死がございます。
長い年月をかけて生き、最後には大爆発を起こして、小さな生を吹き飛ばしながら死に至ます。稀(まれ)に大爆発の際に、他の惑星を巻き込んで通常の何万倍の爆発が起きてしまいます。飛び散った星の破片は衝突を繰り返し、エネルギーが生まれました。
私めの居りますこの星にも、そうした事例で生まれた神が二柱。
大神は好奇心旺盛でございまして、宇宙を気ままに旅をしておいででした。
もう一方の女神は、ただ宇宙を漂うエネルギーの1つでございました。
さて、その後彼女がこの星にいらっしゃるまでを、再生してみましょう。
ふよふよ浮いて、ただ漂う。それが「私」だった。
そんな私に何かが入り込んできた。爆発した星にあった生命の魂。今にも消えそうだったから、私の力を使って維持してみた。少し力が足りない…周辺にあった「私」を吸収して、大きくなる。その内、魂が星を恋しがった。星はもう存在しない。周りを見れば無数の星が見える。私は移動を開始した。
彼女は生命の環(わ)が存在する星を探して、旅に出ました。生命の環とは、星で生まれて死にまた星に産まれるという、生命の循環システムが「生命の環」と申します。星は数あれど、生命の環が存在する星は少なく、彼女は散らばっていたエネルギーを吸収しながら、必死に探しました。そしてたどり着いくのです。この星に。
生命の環が見える星を見つけた。覗き込むと「黒いもの」と「生命」が星の上にあった。「黒いもの」が生命たちを飲み込もうとしていて…情報が足りない…少し星を吸収して情報を得る。
「黒いもの」は生命たちの一部だった。それなのに生命たちは、「黒いもの」に吸収されるのを拒んでいる。私の内の魂も、「黒いもの」を拒む。力を乗せた風で吹き飛ばしてみた。飲み込まれそうだった生命たちが、私に寄ってくる。その後も私は「黒いもの」を吹き飛ばし続けた。
彼女は生命たちから「神」として崇められます。この星の生命たちはまだ人間に進化しておらず、その元の姿をしておりました。しかし、吹き飛ばすだけでは消えず、やがて集まり、大きな塊(かたまり)となります。「黒いもの」を消すには、理解して、分解する必要がございます。彼女は「黒いもの」をほんの少し吸収して情報を得ます。流れ混んできたのは、「憎悪」「怒り」「恨み」「恐怖」「嫉妬」などといった負の感情。今まで感じたことのない強烈な感情に、苦しみます。そんな彼女に1つの生命が寄ってきました。
「私を吸収して。」
いつも私の近くにいて、話しかけてくる生命が私を見上げて言った。
「あの「黒いもの」は私たち生命の負の感情でしょう?それに対になるものが必要だわ。」
…そうだろうけど…そんな事をしたら、あなたがいなくなっちゃう。
「いいの。優しいあなたと 1つになって、あの「黒いもの」を消せるなら。それに、あなたの内の魂がいつまでも、この星の生命の環に入れないでしょう?」
いつも寄り添って話をしてくれるあなたが、居なくなる…この感情は何?
「それは「寂しい」よ。ふふ、ありがとう。私はクア。あなたにこの名前をあげるわ。」
そういうと拒む私を無視して、内に入ってきた。流れてきたのは、
「嬉しい」「楽しい」「愛」「素直」「希望」…すごい…私に内に暖かい感情が優しく広がる。「黒いもの」は消すのではなく、「浄化」すればいいのね?優しいクア。あなたの願いは私が守るわ。
私の内にいた魂が、生命の環に入りたいと言ってきた。
「俺はこの星の生命になって、帰ってくるから待っていて。クアのように、あなたの力になりに。」
浄化の力を得た彼女は「黒いもの」の塊を見事に浄化しました。しかし、この星の生命たちに、彼女は驚異に映っていました。星を食べ、「黒いもの」を食べ、そして生命までも食べてしまったと。彼女を責め恐怖してしまい、せっかく浄化した「黒いもの」を発生させます。その内、とうとう彼女の浄化も間に合わなくなりました。彼女はそれでも必死で、この星を守ろうと力を使い続けます。自分に溶けてしまったクアと、この星の生命の環に加わった「彼」のため。
そこにひょうっこり現れた我が主人(あるじ)大神。不足した星のエネルギーを、他の星々から少しづつエネルギーを分けてもらって星を安定させ、その時あった「黒いもの」を全て、彼女の「浄化」とは違う「消滅」の力で、消し去ったのでございます。彼女は力を使い続けていた反動か、眠りにつきました。大神は分けてもらったエネルギーの欠片で、眠っている彼女を元に、この星の生命の体を使って、再現したのでございます。浄化の力を持つ彼女がこの星に必要だと、思ったそうでしてね。それから大神は、星を安定させるために、他の神々も作ります。それでも彼女は、この星の生命たちにこう呼ばれてしまいます。「厄神」と。
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