1人が本棚に入れています
本棚に追加
Act 2
寒っ。
目が覚めた。
真っ暗な部屋。
トイレ。
あれ?ベッド?
布団に寝てたよな。
ん?
ドア?
開けた。
廊下?
でも何となくわかる、トイレの場所。
はいると風景が違った。
あれ?ここ、実家?
そんな気がした。
明るい、何時だろう?
換気扇はあるが、小さな窓があり、それを開けようとした。砂か埃かわからないが噛んでいて、ズスズスと音を立て開いた窓の先。
雪明かり。空はグレーで雪がぼとぼとと音が聞こえるくらいの勢い落ちてくる。
夢?
用をして、温い便座に少しでも長く座っていたいような気がして。
それでも、外からは、シャンシャンと、チェーンを巻き付けた車が通る音がした。
こんな日に車で出かけなくても。
出てキッチンへ。
寝ぼけているのか、なんだかいつもと違う風景。
可笑しいな。
するとスマホがどこかでなっていた。
目のまえ、キッチンテーブルにあるスマホは私のもの?
中には、懐かしい小学校の名前。
メール?
きょうの学校はお休みと書いてある。
なんで小学校?
可笑しいな?
横を見るとリビング。
不思議と可笑しいとも思わないままカーテンを開けた。
え?
真っ白な雪の上には、どう見ても小さい子が歩いたような足跡。
赤い長靴?
何だろう点々と赤い色が…。
窓ガラスに近づくと自分がうつった。
長かった髪はショートカット。何となく母に似た顔に、一瞬自分じゃないような気がした。
慌てて洗面所の鏡を覗いた。
老けた顔は、母そっくり。
そしてやっと現実に戻った。
目のまえには、子供用の歯ブラシが二本と男性用の髭剃りやいろんなものがある。
そうだ、ここ、私の家だ。
「母ちゃん腹へったー」
「ママ―、起きたー」
子供の声に、さっきのが夢だったんだと思いほっとした。
でもふと考える、この人の顔が浮かんでこない。
なぜ?
キッチンへふらふらと戻り、帰ってきた子供たちに学校が休みになった話をした。
喜んでいる二人。
そして、パパは、会社はと言っている。
起こしてきてと頼むが、まだ彼の顔が出てこない。
これも夢?
朝食の用意。
あれ?電気が…。
「ママ、電気付かない」
「停電だな」
その声に振り返った。
そこに立っていたのは。
「俺も休みかな?」
ぼさぼさの頭をかきながらスエット姿の男性。
なんかおかしくて笑えてきた。
「何笑ってんだよ」
「何でもない」
そこに立っていたのは、彼じゃなかった。
夢だったんだ。
「母ちゃんご飯どうする?」
「こういう時はストーブだ、父ちゃん、あれだそう、あれ」
「はい、はい、それより俺仕事無理だよな」
外を見ながら言っている。
駄目なの?
リビングの外。
え?
また走り寄った。
さっきまであった子供の足跡なんかない位、雪がうずたかく積もっている。
「ねえ、あんたたち、どこで遊んできたの?」
「俺ら?」
「玄関、雪だるまあるよ」
「変な母ちゃん」
最初のコメントを投稿しよう!