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Act 5
次の日の朝、降り積もった雪。
主人と一緒に雪かき。
久々の大雪に、いつまで持つかななんて大笑いしながら片づけていた。
ちょい、ちょいと呼ばれ見たのは、庭から玄関へと延びる脇道ではなくて、お隣さんとの境で、大人は横を向かなきゃ入れないところ、私たちは通った事のない方を指さしている。
「なに?」
「見ろよあれ、見えるか?」
どこ?
何かいるというのだ。
動物?犬?
「お前老眼か?」
「バカにした近眼よ、なんだろう?」
ちょっとと言って入ろうとするのを止めた。屋根の上もすごくて、もしもの時は埋まってしまう。
「ねえ、あそこからなら、ちゃこか、ケンが届かない?」
中から出してみるか。
お風呂の窓の下に何かいる、見てほしいと頼んだ。いっぱい着せて寒くないようにした息子を抱き、さかさまにした。
「どうだ」
「んー、白くて、あ、何かいる、いた、おいで、大丈夫だよ、父ちゃんもっと下ろして」
おう、どうだという彼を私と娘も押さえている、まるで大きなカブの一場面みたいと娘が言う。
「何がいるの?」
「犬、すんげ―小さい、よし捕まえた父ちゃん上げて」
足跡の犯人はこいつだなというけど、ケガしてない?
見てる夫。
「あー、足切れてるな」
「ママ、なんで知ってるの?」
ん?そうかなって、動けなかったんだもん。
あれは夢じゃなかった、赤い長靴の正体はこの子だったんだ。
痛いのか足をぺろぺろ。
「父ちゃん、飼いたい」
「んー、でもなー、どっかの犬だったらどうする?」
「あーそうか」
「じゃあさ、迷子でちゃんと交番に届け出を出して、その間だけ、ねー、おとーちゃーんおねがーい」
「パパ―、おねがーい」
「もう、あ、ねえ時間、遅刻」
「うわー、お前らも支度しろ」
「ママやすむ」
「何言ってんの、ほら行く支度、ご飯、そうだこの子ご飯でいいの?」
「おう」
「牛乳は?」
「だーめ、腹壊す」
「そうなの?」
「そうなんだ」
我が家に来た珍客、真っ白い子犬は、モリモリ食べ、元気そうだ。
交番まで連れて行くという息子が抱きかかえる。
夫の後をついて歩く二人の子。
そういえば、昔、両親や祖父母の後をこうして追って学校に行ったよな。
それが懐かしくて写メを取っていた。
大きな夫の足跡に子供たちも足を入れ歩く姿。
「ママ、見て、一つしか足跡ないよ」
振り返ると、夫の足跡だけで、それも写真に収めた。
ここ数年、雪は降らなかったからこんなの久しぶりで子供たちも大はしゃぎ。
あちこちで雪かきをして、車は昨日より少ないようだ。
夫も電車ではなく、会社の人の車に乗せてもらうんだそうだ。
私もパートだが、夫は今日も休みと言ってくれたようで、病院へと言って来ようと思っている、この子たちにうつすわけにもいかないしね。
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