謎の湿気に悩まされるMの話

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 しかし、こうやって自分に起こる数々の不可解な出来事を反芻(はんすう)した所で、一向に原因も解決策も見つからない。そう判断した守康は一度頭をリセットするために、さっき沸かした風呂に入る事にした。風呂は彼にとって唯一以前と同じ様に過ごせる場所になっていた。入浴時は蒸気に満ちている。元々湿度が高いのだから彼に付いてまわる湿気も大して気にならないという訳だ。片膝を立て、のそりと立ち上がる。彼が歩いた後のフローリングには露で出来た足跡がついていた。  日はとうに沈み暗闇が外を支配している頃、彼は脱衣所で格闘していた。服の首元を掴んで脱ごうとするが、守康の肌にぴったりと張り付いてなかなかするりと剥けない。下手をしたら皮膚まで服に持って行かれそうだ。しょうがないから手を交差させ、下からめくり上げてなんとか衣服をはぎ取り、洗濯機へ放り投げる。裏返っていたが面倒くさいからもう元には戻さない。元に戻したとしてもまた脱ぐ時裏返る。毎回裏返る。どれもこれも鬱陶しい湿気のせいだ。全裸で過ごせれば幾分かマシなのかもしれないが、季節も警察もそれを許してはくれないだろう。
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