終電間近

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 口頭で説明を受けたあと、詳細データをそれぞれ隊長から受け取り敬礼したあと、隊長も降車してオレ達だけが残った。 「今回は2両編成か」 「ちょっと、着替えるから前の車両に行ってよ。このスケベ」 「誰が小娘の裸なんかに興味持つかよ。すぐに出るから早く着替えろよ」 自分の装備を持つと、前の車両に移動する。適当なところでスーツから戦闘服に着替えて、点検してから武装する。 それから運転席に移り、一般運転手は知らない隠しボタンを押して、換装した電車の武装を起動する。 「よしよし、機嫌は良さそうだな。今回も頼むぞ」 「マカセテクダサイ」 AI(人工知能)のシーロが応える。  ブレザーの制服から戦闘服に着替えた小娘がやってくる。 「準備オーケーよ、フジ」 「よし行くぞ、ケイ」 作戦時のコードネームを言い合うのが、作戦開始の合図だ。  電車の前の車庫の壁に穴が空きはじめる、穴の中はゆらゆらと不安定な空間となっており、視線を下にうつすと水晶のような結晶でできたレールがのびている。 「12000系パノラマanother、発進」 発進呼称とともに電車はゆっくりと走り出す。 2両編成はあっという間に亜空間に入り、車庫の穴は閉じていく。オレ達が帰らなければ開くことがない。 「AD001X36Y127Z500T1235、ツウショウ ダストボックス 二 トウチャク シマシタ」  シーロの合図とともに、オレ達は戦闘態勢に入る。 着いたのは空中で全方位で何も無い。青空の中雲が見えるだけだった。 「ケイ、下はどうなっている」 「海っぽいよ、陸地は見えない。そっちは?」 「こっちもだ。座標を間違えたか」 「ワタシ ハ マチガエナイ」 AIのくせにプライドの高いシーロが怒ったように言う。 どういう事だ? と考える前に答えが飛んできた。 パノラマanotherと同じサイズの蜻蛉(らしきもの)が襲ってきた。こいつか!! 「ケイ、いたぞ、大物だ。出番だぞ」 射撃担当のケイが、パノラマanotherに取付けられた3連電磁主砲と、上下左右あちこちに付けられたビームバルカン砲を操り、蜻蛉モンスターを攻撃する。 オレは運転をシーロから受け取り、ナビゲーションと分析を任せる。 「カショウ トンボモンスター タンドク デ ジゲン ヲ コエレル」 なにぃ、単独で次元を超えられるだとぉ!! 「これだからファンタジーのモンスターは……」 こんなもんがオレ達の世界に来たらパニックになるぞ、何としてもここで仕留めなくては。 「ケイ、聞いたか。絶対ここで仕留めるぞ」 「もともとそのつもりよ、任せてよ」 生意気小娘はこういう時頼もしいな。 よっしゃ、こっちも気合を入れるか!! オレは操縦桿を握りしめた。
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