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「だから超焦ってた。」
「焦っていたんですか?」
「そりゃあそうでしょ。普通に痴漢まがいだし、ちゃんと謝れてないし、でも全然会えないし」
「痴漢…」
そんなに考えていたとは正直思っていなかったので、考えないようにしていたのが申し訳なく感じた。
「で、やっと今日捕まえられたのに、要らないとか言ってるし…余計に焦ってチューしちゃった。…ごめんね。」
「ぅ…。それは、もう、いいので」
あんな刺激の強いものを思い出させないで欲しい。
視線を逸らすと先輩がクスクスと笑った。
「もしかして照れてる?」
「…黙秘します」
「なにそれ。可愛いね、瑠璃ちゃん」
「ちょっとでいいので黙って頂けますか」
そう話を逸らせば「じゃあ3秒だけ黙る」と茶化される。
屋上で一緒にご飯を食べていた頃と変わらない、何でもない様な会話に落ち着いてしまうのはきっとこの人のせいだ。
独特のペースを持っていて、一度引き込まれるとなかなか抜け出させてくれないこの人が悪い。
そう結論付けて心を落ち着かせた。
「でさ、瑠璃ちゃん」
「はい?」
「瑠璃ちゃんのこと、好きなんだけど。」
「………は???」
思わず本気で失礼レベルのトーンで言葉が零れてしまったのは言うまでもない。
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