32人が本棚に入れています
本棚に追加
「今日は一緒に帰れる?」
「ん…はい、今日は大丈夫です」
「やった。じゃあ公園の方で待ち合わせしよ」
こくん、と頷いた瑠璃ちゃん。
後ろから動く頬を見るのが最近楽しくて、触りそうになって、お昼中だからと我慢する日が増えた。
一時、自分勝手な行動からすれ違ってしまったけれど、こうして腕の中に納まってくれてものすごく嬉しい気持ちが隠せない。
(…俺、こんな奴だったっけな)
自分の変わりように若干引いてしまうところもあるけど…ある意味仕方ない。
相手はあの瑠璃ちゃんなのだから。
「先輩」
「んっ?なに??」
「今日は触らないんですか?耳」
「んぐっ…」
振り向いた瑠璃ちゃんの上目遣いと言葉に、食べていたパンが喉に詰まった。
付き合ってまだそこまで日は経っていないけれど最近わかったことがこの、彼女の無自覚な攻撃だ。
決して深い意味はない。多分いつも触っているから今日は触らないのかと、ただ単に聞いているのだろう。
でもこっちからすると結構なクリティカルヒットなわけで、嬉しいけれど男としては困るところもあって悩みどころだ。
だから今日は少し、仕返しすることにした。
「んん…。うん、触るよ?もちろん」
「もちろんなんですね…。」
「うん。ちょっと待ってね」
残っていた昼ご飯を詰め込んで、お茶で一気に流し込んだ。
その間に、瑠璃ちゃんもお昼を終えたようで持っていた小説に目を落としていた。
俯いたことで髪が垂れてうなじが露わになる。
あまり外に出るのが好きではないと聞いていた通り、白い肌に心臓がざわついた。
最初のコメントを投稿しよう!