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今日もまた、瑠璃ちゃんとのお昼を終えて教室に戻るとよく絡んでくる女子達にどこに行っていたのか、放課後付き合って欲しい等々質問責めに合い受験勉強よりもかなり負荷がかかったのだが。
しかし今日は放課後瑠璃ちゃんと変える約束をしているので、それに向かって頑張ろうと気合いを入れ直した。
そして放課後、人に囲まれる前にと友人らに声をかけて早足に教室を出た。
待ち合わせは公園だけれど、一目見れないかなと瑠璃ちゃんの教室前を通ってみる。
横目に中を伺うと、瑠璃ちゃんがカバンに教材をしまっているのが見えた。
今日は結構早く落ち合えるかも、なんて思いながらもスマホを取り出し、瑠璃ちゃんに学校から出る連絡を入れた。
先日のすれ違いがあったのですぐにお互いの連絡先を交換していたので、連絡も取れるようになって一安心したところだ。
下駄箱に着くとすぐに返信があった。
『少し遅れます』
一瞬、おや?と思ったものの、何か用事が入ったのかと思い直し『わかった。公園で待ってるね』と送り返して学校を出た。
公園について数十分、教材を取り出して復習していると「先輩」と声を掛けられてそちらを向く。
そこには瑠璃ちゃんが控えめに立っていた。
その姿に、違和感があった。
「瑠璃ちゃん…何か、あったよな」
「いえ、何も」
「嘘つかないで。さっきまで制服だっただろ」
「…気のせいだと思います」
気のせいなわけがない。学校に出る直前、確かに瑠璃ちゃんは制服だった。
その間に何かあって体操服に着替えたのは間違いない。
「髪も濡れてる…。何があった?俺に話してよ」
瑠璃ちゃんに近づいてそっと手を取る。
小さい手はひんやりと冷たくて、温めなければとその手を包む。
瑠璃ちゃんは一瞬困ったような、でもどこか安心したような表情を見せたけれど何も言おうとしない。
それがものすごく、つらい。心が痛くなる。
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