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「瑠璃ちゃん。この後時間頂戴」
「え…?わ、先輩?」
ぐいっと、手を引いて歩き出す。
瑠璃ちゃんの家の方向に向かって歩くけれど、目的地はそっちじゃない。
いつも行く道の手前で曲がると、瑠璃ちゃんから疑問の声がかかるけれど今は気にしないことにして進む。
行き着くのは俺の見知った場所。というか自宅だ。
中に入って、戸惑う瑠璃ちゃんに自宅だと伝える。そうなのかと一瞬息を抜いた瑠璃ちゃんを横抱きにして二階に上がった。
「せ、先輩…?!」
「こら暴れない」
「この状態で大人しい方が問題だと思います…」
なんて口問答しながら自室に入ってベッドに瑠璃ちゃんを下ろす。
そして自分の服とタオルを引っ張りだしてまた瑠璃ちゃんを抱える。
「先輩…?あの」
「風呂場連れていくから、シャワー浴びて温まって。話はそれから」
「え、いや、あのか、帰ります。だから下ろして…」
「ダメ。俺と離すことあるでしょ。でもまずは体冷えちゃってるみたいだから温まるのが先。」
でも、と渋る瑠璃ちゃんを風呂場に連れて行って中に押し込んだ。
最後まで抵抗を見せていたけれど、「俺が脱がせて一緒に入ろうか」と言えば諦めてくれたので、リビングで待つことにした。
しばらくして扉が開く音がしたので、そちらを見ると俺の服に身を包んで申し訳なさそうな表情を見せる瑠璃ちゃんが立っていた。
小さくなったスウェットの上下を渡したものの、やはり瑠璃ちゃんにはダボダボみたいでズボンの裾を折りたたんで履いていた。
物凄く、可愛い。
(…じゃなくて、いや、可愛いけどそれは後)
「ちゃんと温まった?」
「はい…。色々お借りしてすみません…。」
コクリ、と頷いた瑠璃ちゃんの頬はピンクに染まっていて、しっかり温まれたのだろうと安心してその頬を撫でた。
少しくすぐったそうにする瑠璃ちゃんが可愛いが、その気持ちをぐっと堪えて手を取って二階へと連れていく。
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