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翌日。
「こんにちは」
「お。いらっしゃい」
お昼休みに屋上に上がるといつも通り、パンの袋を片付ける先輩が胡坐をかいて座っていた。
今日もパン…と訝しげに見つめていると、何を思ったのか自身の脚をポンポン叩いて「おいで」と催促された。
ここはもう気にしないところなので「失礼します」と断りを入れてからそこに座った。
「今日は一本に縛ってるんだね、髪」
「あぁ…はい、今日は体育もあったので」
「あ。やっぱり?瑠璃ちゃんっぽい子が走ってるなと思ってたんだ」
「…金輪際、窓の外見ないで授業に集中してください」
「フッ…辛辣だなぁ」
軽く笑いながら触るねと、一言零して耳に触れる先輩。
変に優しい手つきは触られ始めが少しくすぐったくて肩に力が入ってしまう。
しかしそれを知られるのが何となく嫌で、バレないようにそっと力を抜くよう心掛ける。
「…瑠璃ちゃん、今日のおかず何?」
「それ、毎日確認することですか?」
「うん。重要事項。」
重要事項て。
耳を触りに来ている人が何を気にすることがあるのかと思う。
「今日は玉子焼きが入ってます」
「え、いいな…」
「へ?」
後ろから感じる熱が近づいた気がして思わず振り返りそうになって、急停止する。丁度振り返ろうとした方から先輩が顔を覗かせて、耳に先輩の髪が触れる感触がしたからだ。
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