15人が本棚に入れています
本棚に追加
夜。自室にて。
棚に並べた、まるで「三日月(クロワッサン)」のように寝そべるニャンコ眺めて、時雨はホクホク顔であった。
「なんだ、化物屋敷みてーだな」
開けっ放しの時雨の部屋を覗き込んだ晴海がそう呟いた。
風呂上がりの濡れた頭をガシガシと拭きながら、部屋に入ってくる。
「化物じゃないってのっ」
大量にある寝姿ニャンコをみて、たぶん猫屋敷と言いたかったのだろうが、間違いにもほどがある。
「お前にしてはずいぶんつぎ込んだんだなー」
こういうものには節度を持って楽しんでいる時雨を知っているので、大量に並べられたニャンコがいささか不似合である。
「二回分しか使ってないよ」
「うん?」
「なんか変なサラリーマンが、やたらとガチャガチャしてたから……」
時雨は昼間の出来事をかいつまんで話をすると、
「お前、気をつけろよ」
晴海が珍しく注意した。
「わかってるよ」
学生の頃、時雨はこの中性的な顔のせいで女と間違わられ、やたらと同性からストーカーまがいなことされた経験がある。
晴海はそのことを心配しているのだろう。
すん、とわずかに晴海の吐息からただように匂いに時雨は、
「それより兄貴、昼間カレー食べた?」
「あぁ。ちゃんと歯磨いたんだけどな。――悪い……」
「平気。大丈夫」
不毛な会話だ。
たかだがカレーの話だ。
昼間に時雨が出かけている間に、晴海が何を食べようと関係のないことだろう。
ただ――、一つを除いては。
最初のコメントを投稿しよう!