■セブン・スイートデイズ  本編

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■セブン・スイートデイズ  本編

 いつものように白いシャツに黒いズボン。  お決まりのハーフサイズのダブリエに身を包み、階下にある自分の職場に向かう。  まだ誰も存在しない食堂のホールはシンと静まり返り、まるで世界がいまだ眠りについているかのようで、こっそりと夜中に起きだした密やかな気持ちになる。  広瀬はこの空間が好きだった。  フロント係である彼は、料理の仕込みをするわけではないので、別段早く支度を済ませて職場につくことをしなくてもいいのだが、今日はなぜか早く目が覚めてしまっただけのことだった。  料理人で一番下っ端の赤木はすでに出勤しており、ランチの仕込みをしている最中だった。 「おっはようございます、ヒロさん」  短い赤茶色の髪で人懐こい顔つきの青年が元気よく挨拶してきた。  学生のころは運動部に所属していたのか、やたらと礼儀正しい。 「はよ~」  一方、ふだんからやる気のない風の広瀬は、元気ハツラツな赤木のテンションに充てられながらも、欠伸交じりに応対する。 「ヒロさん今日は早いっすね」 「そうか?」 「そっすよ。そうそう今日からですよね、新しい人が来るの」 「あぁ、そういえば……」  広瀬と同じフロント担当のもう一人は、先日バイクに乗って事故にあった。  軽傷であったため、ひと月ほどで復帰はできることだが、その間、広瀬が一人でホールを切り盛りしなくてはならなくなった。  平日時はもとより、ランチやディナー時にはどうしても一人では手が回ることができず、下っ端の赤木もヘルプに駆り出されるのだが、いかんせん料理以外は妙に不器用な青年は極力戦力になることはなかったのだ。  それを見かねたオーナーが短期間だけのバイトを募集したのだ。  知り合いに一人いるからと、そんなやり取りがあったのはつい一昨日のことである。  そんな早く適任が見つかるのだろうかと思ったが、オーナーの人柄はこの店の従業員全員が知っていることなので、きっと大丈夫だろう。  その人物が今日から出勤してくるのだが、それはまるで静かな水面に突然落とされた小石のように、小さな波紋が、広瀬や赤木の心に、期待と不安を広げたのは言うまでもなかった。
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