■【紫陽花】

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**** 「はぁ~、やっぱりお酒は日本酒にかぎるわね~」 ほんのりと薄紅色に頬を染め、一気に空けたコップを うっとりと眺めていた。    全国に展開するチェーン店の味付けとは違い、ひと味気をきかせた料理はどれもこれも美味しかった。 もっとも先程の飲み会はシヨカの行動にハラハラして、飲食どころではなかったのだ。 「だいたいあーゆー席に、ツボミちゃんは似合わないわよ」 すでに3杯目に突入しているシヨカは、顔は赤くなっても意識はしっかりしており、注文したホッケの身を綺麗にほぐしていた。    「どーせあのあとカラオケ行ったって、幹事役押し付けられちゃうのは目にみえてるし~」 そうなのだ。 結局私は、そういう損な役回りなのだ。 シヨカのように可憐でも、他の人達のように積極的でもない。 地味だし、身長も高い(175㌢)、そばかすの肌に、くせっ毛で……、私には良いところなんて どこにもない。    そのくせ、シヨカは、  烏の濡れ場色の髪、  目鼻立ちのしっかりした容貌、 小柄で日本人形のように和服がよく似合う。   おまけに書道の家に生まれたおかげで、字も綺麗だった。 比べるべきではない。 なにからなにまで違う 私とシヨカを比較するのは、 お門違い、なのだが、 けれど……、 どうしても、そばにいると 比べてしまう……。 私はいつも、 明るく我が道を進む シヨカに対して、 強いコンプレックスを抱えてしまう……。  
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