【紫日記】

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【紫日記】

今日は 腹が立つことと、 楽しいことの 半々の日だった。 ツボミちゃんに誘われて行った飲み会は、散々なものだった。 どうも私目当てで、 ツボミちゃんに飲み会の話を 持ち込んだらしい。 それはまぁ別にいい。 知らない男子に言い寄られてもなんとも思わないし、 こちらからその気がなければ、相手もいずれ諦めるだろう。 本当に、そんなことはどうでもいいのだ。 本来の目的は、以前から、 ツボミちゃんから時々 会話に出てくる ある人物を私は見に、飲み会にいったようなものだ。 周りの男子がやたらめったら私に話し掛けて来るさなか、 一人だけツボミちゃんを盗み観ている奴がいたのだ。 嗚呼、なんて腹立たしい! 周りの目がツボミちゃんに行かないように、 気合いを入れて装って行ったのに、 あいつだけはまったくもって 無視である。 嗚呼、 今考えても無性に腹が立つ! ツボミちゃんの華麗さを、私だけが知っていればいいのに、 あいつは知っているのだ。 長身を気にして、 少し猫背の背中や、 ふわふわと柔らかな猫っ毛、 白すぎてちょっとした日焼けでも赤くなってしまう肌、 話すときにじっと相手を見る仕種が堪らなく愛おしいっ。 そんなツボミちゃんを幼いときから見続けていたのに、 大学二年生に進級したとたん、 急に男の影が浮上したのだ。 一瞬……、眼があった。 あいつはにこやかに愛想のいい笑顔を向けてきたが、 そんな上辺だけの笑顔など、 私は断固として騙されるきはないぞ! そのあと、 飲み直しを兼ねて 以前から気になっていた店に 足を運んだ。 お酒にあまり強くないツボミちゃんは、 一杯だけ私に付き合ってくれて、 頬を紅く染めた姿は とてつもなく可愛かった。  
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