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【蕾1-2】
シンコ書店。
私が勤めるバイト先だ。
すでに新なのか古なのか
悩むところだが、
とりあえず、古本屋である。
謂れは店主の最愛の奥さんが
真子さんということと、
「新しい古本屋をつくりたかったんだよねぇ」
と、軽いノリでナンノコッチャと店主が話してくれた。
普段は店の奥で、
お茶を啜ってるノホホンとしたオジサンなのだが、
本の話になると目の色が変わる。
大手有名古本屋に比べれば、
個人の古本屋など閑古鳥が鳴きそうな気がするが、
シンコ書店はなにげに繁盛していた。
なぜなら、フツーの店ではお目にかかれない絶版本やマイナー本、専門家が垂涎の如く欲しがるレア本などを主に取り扱ってるからだ。
おまけに店主に頼めば目当ての本見つけだしてくれたりもする。
シヨカはここで書道家の本を何冊も買っていったぐらいだ。
「なにここっ。スッゴい穴場なんだけどっ!」
と今ではありがたいお得意様になっている。
それが店主のポリシーなのか、知らずに新刊を売りに来るお客がいるが、
「あ~、そーゆーのは買い取らないで。だってねぇ本屋にも売ってるような本じゃつまんないでしょ」
とのことだ。
休日の夜とあって、お客の入りはまばらであった。
カウンターで事務処理をしていると、人影ができた。
「こんばんは」
見上げるとそこには、
見知った顔があった。
「シノくん……」
長身で黒い下半フレームの眼鏡を軽く持ち上げながら、
彼はにっこりと微笑んだ。
化野 忍。
アダシノ シノブ。
同じサークル仲間の一年生で、
私がほのかに慕っている人物である。
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