【蕾】

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****   「二足の草鞋」 普通の人なら両立出来ないような職業を、一人の人が持つこと。 〔狭義では、博打打ちであると同時に捕史でもあるような、普通の意味では矛盾した兼業関係に在ることを指す〕 新明解 国語辞典より    「つーかなんでこんな名前にしたんだっけ?」 「クロが夜中にテレビ観てて、いきなりワラジが編みたいなんていうからだよ」 「いまどきワラジだなんて」 「中途半端に流行りものに手ぇだすの好きよね」 クロ先輩がしゃべると、 シロ先輩、アカ・アオ先輩が軽快に言葉を紡ぐ。 というかクロ先輩、意外にいじられてる? そのクロ先輩の素足には自分で編んだのかカラフルなワラジを履いている。 「とにかく……」 「簡単にいえば、自分の専攻している以外の特技を活かそうって話」 「ちなみにクロは工作やったり唄が上手いわね」 「シロは……顔に似合わず腹黒よね」 「あーわかるわかるっ! おまけに心が狭いっ!」 「ちょっとー!」 「気をつけなさい」 「シロに目つけられたら、ただでは済まないから」 クロ先輩が寝ていたソファとは別の白いソファに腰掛け、両隣に座られたアカ・アオ先輩からは香水のいい匂いがした。 注いでもらった紅茶は、なんというか……、 ……なんというか、――渋い! うっかり顔に出てしまったのか、 「やっぱり紅茶マズイでしょ」 「シロって意外にこういうのは下手なのよね」 アカ・アオ先輩がさっきから、やたらと砂糖とミルクを入れている理由がわかった。 「悪かったね。だったらアカアオ、おまえ達が入れろよ」 「申し訳ないけど」 「ティーカップ以上、重いもの持ったことありませんので」 後から聞いた話だが、アカ・アオ先輩は結構なお金持ちの家柄らしい。 「えーとミナミノツボミちゃんだっけ」 ボリボリと頭を掻きながらクロ先輩が、紅茶缶を目の前に差し出す。 「悪いんだけどさぁ、茶ぁ入れてくんね?」 「は、はぁ……」   
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