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「ま、アカ鬼アオ鬼にめげるようじゃ、紫の君には敵わないからねー」
ニヤニヤとシロ先輩はことの成り行きを見守る体制で、こちらもまったく助けてくれる様子はない。
「初めに言っておくわ」
「ツボミに変な気を起こしたら許さないわよ」
なんでいきなりミナミさん?
「いいこと? あんたはただ背が高いという理由だけでこのサークルにいれたのよ」
「ツボミが自分だけ背が高いのを気にしてたから、いわばあんたは引き立て役なの!」
「悪かったな俺ら身長低くて」
「170あるかないかだもんね」
男性陣の野次が飛ぶ。
…………なんというか、合点が行かない。
確かに、サークル参加時に身長を訊かれ(190近いけど)俺だけ名前を別の紙に書かされたり、変な待遇をされたのは気になってはいた。
「あんたはツボミにいい影響を与えると同時に悪影響をも与えるのよ」
「いわば両刃のつるぎなの!」
「……あのっ。俺別にそういう変な気をもって入会したつもりないんですが」
「じゃあなんで入会したの!」
「いってはなんだけど、私達に惹かれたとは到底思えないし」
「シロクロは論外だしね」
「消去法でいったらツボミしか当てはまらないのよ」
……すごい言い掛かりだ……。
俺は思わずうなだれてしまった。さっきからやたらと双子の態度が冷たいとは思ったが、なんだよそれ、単に嫉妬なのか?
「――確かに、ミナミ先輩の才能は憧れます」
けれど、変な下心があるわけじゃ、と続けようとすると、
「あーもうっ! とにかくツボミに変なことしたらただじゃおかないから!」
「ただでさえあの子は魔性の女なのに!」
「計算のようで実は天然だったり!」
「じっと見つめられて気があるんじゃないかと思ったら、単によくみえてなかったり!」
「時々、猛烈な毒気を放したり!」
「そのくせ妙な所で甘えてきたり!」
――――と、延々延々とミナミさんについての魅力(?)をアカ・アオ先輩は述べてくれた。
はたから見ればノロケとしか聞こえようがない。
ちなみに、厶ーンバックスとは、駅前のコーヒーショップであり、大学から徒歩で十数分。自転車だと往復で30分ぐらいで帰ってこれる。
だが――。
「もしもしミナミちゃん? 悪いんだけどさ、ねんりん堂でバームクーヘン買ってきてくれない? そうそう、駅向こうの。遠いんだけどさぁ、悪いね」
悪びれるそぶりもなくシロ先輩が追加注文したばっかりに、俺はあと小一時間ほど、魔女姉妹の小言を聞かされる羽目になった。
誰か助けてくれ……。
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