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【化 日記】
はぁ……。
あぁ、本当にため息って溜まって出るんだなぁ。
何が悲しくて大の男三人が小さなテーブルに肩を寄せ合って、抹茶スイーツなんか食べなくちゃいけないんだろう……。
****
「まぁ泣くなよ、化野」
ポン、と右肩にクロ先輩の手。
「男の子なんだから色々と打たれ強くなくちゃな」
ポン、と左肩にシロ先輩の手。
「泣いてもいないし、打たれ弱くもありません」
取りあえず、それだけは言えた。
恐ろしい双子鬼の小言拷問に耐えたのはいいが、いかんせん、小一時間も正座させられたせいか足が痺れて立ち上がれない。
あらかたイジメつくしたのか、興味がなくなったのか、言いたいことを好きなだけ言い残してアカ・アオ先輩は立ち去った。
再び、雑誌や音楽を楽しんでいたりする。
「大丈夫かぁ? 化野?」
「無理するなよ? 化野?」
心配してくれるクロ・シロ先輩に俺は少しだけ感動した。
あぁ。
本当に少しだけ……。
「大丈夫か? 化野!」
「無理するなよ? 化野!」
「うわぁぁぁぁ! 止めてくださいぃぃっ!」
猛烈な衝撃に俺はのたうちまわった。
足が~っ!
足が~っ!!
「痺れてる人間をつっついたりするのって楽しいのな♪」
「あの悶え苦しむ様がなんともいえないね」
ニヤニヤと黒白コンビは口元をつり上げた。
あれ?
さっきまで良い先輩だと思ってたのに、こっちも悪魔なのかよ!
そんな阿鼻叫喚の地獄絵図に一筋の光が差し込んだのは、清らかな声だった。
「遅くなってスミマセーン」
あぁ。天使が帰ってきた。
――と思ったのだが、俺の不様な姿を見るなりミナミさんは、
「まるで産まれたての小鹿か、夏の終わりのセミみたいね」
ミナミノはどくの息を吐いた。
アダシノは猛毒をうけた。
毎ターン、マイナス50のダメージ。
あぁ、この世に神も仏もいないんだぁ……。
それから切り分けてもらったバームクーヘンの味は、涙でしょっぱい味がした。
いや、実際泣いてないけど。
(心でね)
****
「というわけで、化野のあだ名を決めたいと思うんだが、……ニシノ(2シノ)でいいか?」
さっきから慣れない手つきで、シロ先輩のノートパソコンをいじってると思ったら、アリガタイことに俺の名前を考えてくれていたらしい。
確かに、ここの先輩たちは略して名前を呼び合っていたりするから、なんだか親近感があって嬉しかったりするのだが、
「なんでニシノなんすか?」
「えっ? 気に入らなかった?」
こっちがビックリするぐらいシュンと落ち込んでしまったクロ先輩をみて俺は焦った。
なんかもー、この人メンドクサイな。
「泣くなクロ。お前のネーミングセンスが酷いのはみんな知ってるから」
「なんだよー。せっかく頑張って考えたのに」
ぶぅぶぅと拗ねながらも、置いてあるラズベリーマカロンを一口で食べた。
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