【化野1-2】

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**** 結局のところ、俺はそんなに甘いものが好きというわけではなく、クロ先輩イチ押しの「藤利特製抹茶パフェ」は遠慮して、「白玉あんみつ」を頼んだ。 俺が頼まなかったので、クロ先輩が「藤利特製抹茶パフェ」、シロ先輩に至っては「ところてん」を食べている。 さっきからチラチラと女性陣の視線を背後に感じて、正直、味なんかさっぱりわからなかったけど。 サービスです(何の?)と案内してくれた女性店員が、人数分の抹茶とバニラのアイスクリームを差し出してくれたのだが(小ぶりなので二つで一人分の量ぐらい)、クロ先輩が物凄く食べたそうな顔をしていたので、そっと差し出した。 シロ先輩に至っては、見向きもしないでデザート皿をスライドさせる。 「まー、シノも明日から大変になると思うけど、一過性のもんだから気にすんなよな」 そういいつつ、一つ目のアイスクリームをペロリと食べる。 「うちのサークルはやたらと頼み事してくるやつが多いから、いちいち相談にのれないわけね。そーゆー時はアカアオの慧眼に頼っちゃうんだけど」 そういいつつ、二つ目のアイスクリームをペロリと食べる。 「まーとにかく邪まな考えをした連中が明日、シノのところにいっぱいくるから気をつけろってわけなのよ」 そういいつつ、三つ目のアイスクリームをペロリと食べた。 「えーとクロ先輩? さっきから理解不能な事ばかりなんですが?」 三人分じゃ物足りないのか、口寂しいのかスプーンをくわえたまま、 「よーするにシノは明日、モテモテなのです」 「ちなみに安易に承諾なんかするなよ」 ずずっと最後のところてんの一本を平らげて、青海苔がつくなんて間抜けな事はしない、完璧な所作でシロ先輩が口許を拭く。 「つーかシロ、甘味屋で酸っぱい匂いさせるのやめてよ」 「お前のぷんぷん甘ったるい匂いよりずっとマシだ」 「なんでよー? 甘い匂いは心を幸せにするじゃん」 「鼻がムズ痒くなって集中できなくなるんだよ」 ――とりあえず、眼の前の痴話喧嘩はほっとくとして。 俺は明日がどんな一日になるのか想像してみたのだが、考えれば考えるほど悪い方向にしか進まなかったので、途中で放棄した。 なるようになれ、だ。 支払いのとき、 「ここは俺のオゴリだから安心しろ」 とクロ先輩がいってくれて内心ホッとした。 普段ファーストフードやファミレスの安価なものしか食べてない俺にとって、あんみつ一杯がランチ分もするなんて……。 「あれっ? 金がない!」 クロ先輩が持っている黒い財布はたしかアカ先輩がミナミさんを追い出すために、紙幣を何枚か抜き取ったはずだ。 「アカが抜いてたの気付かなかったのか?」 「え、あれってサークルの金じゃなかったの?」 「……もう仕方ないな。ちょっと持ってて」 ポイっと車のキーをクロ先輩に渡して、シロ先輩が颯爽と支払ってくれた。 「シロ、サンキュー」 「シロ先輩、ごちそうさまです」 くるりと振り返ってシロ先輩がニッコリと微笑みながら、 「なに、肉体労働で支払ってくれればいいさ」 ――きゃーっ!! 最後までサービスしなくてもいいんじゃないんですか、シロ先輩?   
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