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「こんにちは」
さっそうと店内に入る白百合に比べ、黒杉はのたりとやってくる。
ふだんほとんど客が入ってこないのか、奥の座敷でテレビを見ながら茶をすすっていた店主が二人に気づき、
「おぉ、黒白コンビ。久しぶりだな」
と、愛想よく迎えてくれる。
なんだかんだと、ニソワラ会のメンバーは一度はここを訪れている。
印象の強い人物ばかりだったため、店主もよく覚えているのだ。
「店主、頼みたい本があるんですが」
白百合が、いつの間に忍ばせておいたのか、胸ポケットから二つに折ったメモ紙を差し出した。
店主が中身を確認すると、
「ふーん。白の兄ちゃんにしてはずいぶんと変わった趣味だねぇ」
「ええ。どうも後輩が書いたものらしくて、是非とも読んでみたいと思ったもので」
「まぁ、数年前のライトノベルだったら知り合いに聞けばすぐに手に入ると思うよ」
「ありがとうございます」
にっこりと白百合は優雅に微笑んだ。
「なーなー、シロ。……本のニオイ嗅いでると腹痛くなんねぇ?」
「…………」
先刻から随分と静かにしていると思ったら、黒杉の顔は青白くしきにり腹部をさすっている。
本の匂い云々よりも、三人分ものアイスを食べたせいだろ!
と、白百合は激しくツッコミたくなった。
「黒クマの兄ちゃん、トイレ、奥だから使ってけ」
「サンキュー」
そう言い終わるやいなや黒杉はトイレに駆け込んでいった。
「すみません」
「いやいや、兄ちゃんも苦労してるな」
「はは……」
白百合は軽く苦笑した。
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