解答

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解答

「ところでさ、クロにとって『愛してる』ってなに?」 「は? なんだよいきなり」 真夜中の情事を済ませ、再び眠りにつこうとしている温もりの中で、白百合は思い出したかのように訊ねた。 「聞きたくなっただけ」 「うーん、……反対にお前はなんだよ」 「ぅん……、こうやっていると温かい……」 あぁ、そういうことか、と合点がいった黒杉だが、すでに白百合は安らかな寝息をたて、――とうに夢の中だった。 ** 翌日。サークルのたまり場にて。 「どっちかっつーと、嫉妬深けーだけだよなー」 黒杉がからかい交じりに揶揄すると、チラリと目線があった。 一瞬だけ、無精髭の口元がつりあがったのを白百合は見逃しはしなかった。 「そうそうシロ、『アイラブユー』だけどな、おれだったら、相手の全てを紅く染めたい、かなー」 「なんすか、尾崎豊っすか? クロ先輩、微妙に物騒っすね」 意味を読み違えた後輩は軽く聞き流したが、もちろん白百合にはわかっていた。 かぁっ、と全身の血潮が駆け巡る。 「この馬鹿クロっ!」 平常心という厚い化粧をしなければ、羞恥のあまり全身が紅く染まることを、白百合はよくわかっていたからだ。       **** いつものように『ニソワラ会』と掲げた看板の研究室でたむろしていると、 「シロ先輩、首筋のところどうしたんすか?」 大学のサークルの後輩に指摘され、白百合は慌てて壁に掛かっている鏡の前に立つと、 「!」 確かめれば昨日の黒杉の情交の後が、幾つもくっきりと浮かび上がっていた。 「あ、季節外れの虫刺されッスか?」 見当外れな後輩の会話に、部屋の隅でソファに寝転んでいた黒杉が、呵々と笑った。 「化野、虫刺されというより、むしろ虫よけだろ」 一瞬、なんのことか理解できないでいた化野(後輩)だが、 「あ、」 ようやく意味がわかったらしく、 「あの、情熱的な方なんすね」 色事に鈍い後輩は顔を紅くしながら、白百合の紅い跡をそれ以上は追及しなかった。  
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