<5・偽善者>

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『なんと罰当たりな!我らは神の使徒であるぞ!我らに触れられなければ、この少年は永遠に穢れてしまうというのに……せっかく罪を浄化して救ってやろうとしていたというのに!』  そういうセリフは、その汚いイチモツをしまってから言えや。そう思った自分は、多分間違っていないだろう。 「……人間って、本当に怖い。此処に引っ越してきて挨拶した時には、みんな普通の人に見えたってのにさ」  一夏としては、うなだれるしかない。  施設の職員達と、教団の幹部達が捕まってパトカーに乗せられていく様を、多くの野次馬達が目撃していた。一夏が大立ち回りしたことも、狭い町の中で既に噂になりつつあったのだろう。何人もの大人達から、凍り付くような視線を浴びせられる結果になった。なるほど、知恵の言うとおりである。きっと自分が本当に恐ろしいものを見るのはこれからなのだろう。村八分とまではいかないが、それに近い扱いをこれから覚悟しなければならないのかもしれない。  でも、一夏がそれ以上に恐ろしいのは。そんな危ない施設が摘発されてほっとするよりも、子供を預かってくれる場所を失って恨みに思う気持ちの方が先行している親が、これほどの数に上ったということである。  彼らのうちの大よそ半分近くはそのカルト教団の信者であったようだ、と警察の人には聞いている。そして、教団の信者でもないのに、子供を預けていた親たちは。 「確かに、保育園とか、学童とか。そういう場所が不足して、子供を預けられなくて困ってる親がたくさんいるっていうのは知ってるよ。それから……暴れまくるクソガキに本気で手を焼いて、とにかく荒療治でもなんでもなんとかしてほしいって思う親がいるってこともさ」  でも、と。一夏は膝の上で、強く拳を握りしめる。 「だからって。子供を預けたり、更生させることができるなら……多少キナ臭い場所でもいいって。そこまで考えるなんて、間違ってる。行き過ぎてるよ。親ってさ、普通は自分の子供が大事で、傷ついていたり苦しんでたら一番に味方になってやりたいって思うもんじゃないのか?」 「本当はみんなそう思ってると思うよ。でも、理想と現実のズレが大きくて、大きくなりすぎて、思った通りにいかなくなることがたくさんあるんじゃないかな。育児に限ったことじゃないし……いくら自分がストレス抱えて爆発しそうだからって、踏み越えてはいけないラインはあるとは思うけどね」
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