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「きゃあぁぁぁーーーっ!」
悲鳴をあげるとともに、魔法が解けたように身体が自由になる。
「おい、どうした? 大丈夫か?」
隣で礼二が跳ね起きた。
「今、白い女が……」
「女? どこに?」
祥子を胸に抱きながら、礼二が血相を変えて周囲を見回すが、白い女の姿は影も形もなかった。
祥子は両手で必死に顔を拭うものの、降りかかったはずの血もいつの間にか消え失せていた。
「天井に……上から降って来て……」
「マジかよ。夢じゃないのか?」
「夢じゃないよぉ、絶対」
全身が震えて、歯がカチカチと鳴った。喉がカラカラで、舌が上あごに張り付くようだった。
「真っ白で、目がギョロギョロしてて、腕が傷だらけで……あの写真みたいに、血がいっぱい出てて……」
「あの写真……?」
ブゥゥゥゥン、ブゥゥゥン……。
微かな振動音に気付き、二人は顔を見合わせた。枕元に転がった二台のスマホはどちらも真っ暗なままだ。
弾かれたように部屋の隅に置かれた箱に目をやる。隙間から漏れる青白い光。
送られてきたスマホが入っている箱だ。
二人は恐る恐る近づき、箱を開けた。
目に飛び込んでくるたった四文字の受信メッセージ。
かえして。
二人は小さな悲鳴をあげて、スマホを投げ出した。
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