かえして

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 海斗の提案には、さすがに目を丸くした。 「しょせん機械なんだから、壊せばもう二度と鳴らないし。目の前から無くなっちゃえば、それですっきり終わりだよ」  そうして梓とともに祥子たちの部屋にやってきた海斗は、怪しいスマホを渡すや否や、ろくに確認もせずに外のアスファルトに叩きつけた。 「あっ!」  画面が割れて破片が飛び散る。 「まだ甘いな。こういうのは徹底的に壊さないと」  再び拾い上げ、二度、三度。  何度も何度も投げつけられたスマホは、筐体が割れて、中から緑色の基盤やバッテリーが飛び出した。  それをさらに足で踏みつける。バキッと音がして、基盤が真っ二つに割れた。 「これでもう大丈夫だろ。あとは俺が帰りに捨ててってあげるよ」  事も無げに言い、かき集めたスマホの残骸を持参したコンビニ袋に入れる海斗。 「マジ最高~。すっきり!」  その横で梓が脳天気に手を叩く。  祥子と礼二は拍子抜けしたような気分で顔を見合わせた。昨晩恐怖に震えた自分たちが、急に馬鹿馬鹿しく思えてきた。 「あの……海斗君ありがとう」 「礼はいいよ。だったら今度飯でも奢って。なあ礼二」 「人のスマホぶっ壊して飯奢れって、ひでえ話」 「お前らがビビるからだろ」 「いや、俺はほら……だってあんまり祥子が怖がるから……」  バツが悪そうに言い淀む礼二に、祥子たちは笑った。  まるで憑き物がとれたみたいに、清々しい気分だった。
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