かえして

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 梓から電話があったのは、その夜の事だ。 「海斗が……海斗が……」  引きつったような声で、梓が繰り返した。  梓と別れた帰り道、海斗が駅のホームから特急電車に飛び込んだという連絡だった。 「そんなはずないのに……今日だってあの後、あたしの部屋でエッチしてね、ちゃんと避妊だってしたんだよ? 今から自殺する人が避妊するなんておかしくない? それにね、今度新しくできたラブホ行こうって話もしてて……」  意味を理解しかねて、祥子は呆然とした。  自殺?  海斗が?  そんな素振り、全く見せなかったのに。 「どういう事だよ、それ……」  隣で電話を聞いていた礼二の顔も、真っ青だった。 「わかんない。でも、まさか……」 「おい、やめろよ! まさかあのスマホのせいだって言うんじゃないだろうな」 「でも、あのスマホは」  海斗自身が破壊し、もう存在しないのだ。  いくらなんでも単なる偶然だろう。  電車に跳ねられたのだって、自殺じゃなくて事故だ。なんらかの原因で、足を踏み外してしまっただけだろう。  そうでなければ、辻褄が合わない。  あのスマホを壊したからバチが当たっただなんて、そんなオカルトな話は海斗に通じるはずはないんだ。  ブゥゥゥゥン、ブゥゥゥン……。  微かな振動音に二人ははっと顔を見合わせた。
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