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大学に入ってほどなく付き合いだした祥子と礼二はもう二年近い付き合いになる。
お互いのアパートを行き来していたのは最初のうちだけで、ほぼ祥子の部屋での半同棲生活が続いていた。ただ一緒にいたいという気持ちだけで自然とそうなっていったのだけど、二人でいれば光熱費も一部屋分浮くという実利も兼ねていた。
だから数日後スマホが届いた時にも、側には当然のように礼二の姿があった。
「えっ、ちょっと待って。意外といい感じじゃない?」
二世代ほど前のモデルにも関わらず、見た目にはほとんど傷もなく、一見して状態の良さが見て取れた。持ち主はだいぶ丁寧に扱っていたのかもしれない。
「電源入れてみようぜ。壊れてたら洒落になんねえし」
興奮しながら電源ボタンを長押しし、起動してみる。画面の中央に浮かびあがるりんごのマークに、ほっと胸を撫で下ろしたのもつかの間――続けて現れたホーム画面に、二人は眉をひそめた。
真っ黒い画面の中央に、カッと見開かれた血走った目。
まるでホラー映画のポスターを思わせる悪趣味な画像だった。
「きも……」
左目、だろうか。黒目の丸い輪郭が露わになるほど大きく開かれた目は、何かただならぬものを感じさせた。例えるならば――命の危険を感じる程の恐怖に怯えているような……。
「つうかデータ消してねえのかな? 普通初期化してから売りに出すと思うんだけど。画像とかそのまんまにしてるわけじゃねえんだろうな?」
横から手を出した礼二がフォトギャラリーのアイコンを押す。画面いっぱいに赤っぽい画像がずらりと並んだ。
「……なんだこれ?」
「ひっ……」
そのうちの一つをタップし、祥子は思わずスマホを投げ出した。
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