かえして

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 剃刀か何かで何度も何度も切り裂いたような、痛々しい腕。しかもそれは古傷のようなものではなく、まるで今まさに傷つけたような血の滴るものばかりだった。一緒に写り込んだ下のシーツやじゅうたんまでもが、夥しい血に染まっている。  それが何枚も、何枚も――おそらくは場所や時間を変えて撮影されたもので、画像フォルダは埋め尽くされているのだった。  リストカット。  自傷行為。  自殺未遂。  似たような言葉が頭の中に浮かんでは消えて行く。  果たしてそれが未遂で済んだのか。このスマホの主が今も生きているのかすら疑わしい。  むしろもうこの世にはいないと言われた方が、納得できるようにも思える。  「……ヤバくない?」 「ヤベーな、これ……」  二人は息を飲むようにして、スマホの画面にくぎ付けになった。 「ねえ、それ……」  祥子が指差したのは、メッセージアプリのアイコンだ。右上に未読を示すマークが浮かんでいる。  999+。  それは、表示しきれない程のメッセージが溜まっている事を表わしていた。  恐る恐るアイコンをタップし、ひっと二人で震えあがる。
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