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祥子は昔から寝つきは良い方だった。
「あんたは布団に入るとすぐ意識なくすもんね」
そうして朝までぐっすり、夢もほとんど見ず、夜中に目を覚ます事もない。羨ましいわ、と母はよく笑っていた。
だから突然始まったそれが夢の中だと、祥子はすぐに気づく事ができた。
沢山の人間が祥子を囲んでいた。
なんと言っているかはわからないけれど、頭の上から降ってくる一つ一つの言葉と笑い声が、鋭利な刃物みたいに祥子の胸に突き刺さる。
祥子は叫びながら手を伸ばすが、彼らは嘲笑しながらその手を躱し、逆に祥子を突き飛ばす。右に、左に、前に、後ろにとピンポン玉のように弾かれ、ふらつきながらも祥子は必死に手を伸ばし続ける。
そんな祥子を嘲笑うかのように、彼らの手から手へ何かがポンポンと渡っていく。時には頭上を飛び越え、床を滑り、祥子の手をすり抜けていく。
その間にも絶え間なく言葉の暴力は降り注ぎ、祥子の心は今にも破裂しそうな程傷だらけだった。それでも彼らは容赦なく攻撃を続ける。
胸が締め付けられて、あまりにも息苦しくて……でもどんなに手を伸ばしても、祥子の手は届いてくれない。
喘ぐようにして、祥子は必死に叫び続ける。
「……かえして!」
自分の口から出た叫び声に驚いて、祥子ははっと目を覚ました。
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