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ポケットの中が震えたような気がして、祥子はスマホを取り出した。画面に表示された画像に、力が抜ける。キスの口元をハートマークで隠したカップル。さっき教室で別れたばかりの梓からのメッセージだった。このアイコン、鬱陶しいからやめろって言ってるのに。
どうせくだらない内容だろうな、とスワイプしようとした瞬間、手のひらの中からするりとスマホが零れた。
あ……と声を出す暇もなく、スマホが地面に落下する。ピシッ、と嫌な音がした。
「あーあ、また落とした」
隣を歩いていた礼二が呆れたように言った。
拾い上げたスマホの画面は、案の定蜘蛛の巣のように細かくひび割れていた。元々あったひびが全体に広がったようだ。
「あー、やっちゃった。今度はヤバいかも」
指の腹がざらつくのを感じながら画面をなぞると、画面を無数の黒い筋が這いまわっていた。しかし、辛うじて解読できなくはない。
「ええと……これからエッチする、だぁ? 梓の馬鹿、またしょうもないもん送って来て! あいつのせいでスマホ落としたっつーの」
とりあえず一言「タヒね」とだけ送り返しておく。タッチパネルも一応無事らしい。
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