second lap「蓋をする気持ち」

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second lap「蓋をする気持ち」

夕食後ロッジまでの道を歩いている時、ずっと探していた人物を前方に見つけて、聡太に断りをいれて小走りで近づく。 「凪!」 「お、おー晴!どした?」 声にびくっと肩を震わせた彼は、引きつった笑顔を張り付けて振り向く。 もうそれは誰が見ても無理してますというような表情で。 「ちょっと話したいから来て欲しい。」 その言葉に凪が片唾を飲み込んだ。 まだ同意をされていなかったが、そのまま凪に背中を向けるように方向を変えて歩き出す。 間も無くして後ろから足音が聞こえて、ついてきたのが分かった。 そのまま2人で無言で歩き、ロッジからかなり離れた場所で立ち止まった。 同じく立ち止まる音が後ろで聞こえて振り返る。 「さっきは急に悪かった、ごめん。」 色々と考えていたが、まずは頭を下げて謝った。 「いやいや!俺に謝ることじゃないから!大丈夫大丈夫!びっくりはしたけどさ!」 凪が慌てた様子で近づいてきて体を起こしてくれる。 何となく視線はを合わせられなくて少し下を向いていると、励ますように肩をぽんぽんと叩かれた。 「まぁ、咲良ちゃんも驚いてたけどちゃんと向き合うって言ってたから」 いきなり言葉が途切れたように思って視線を上げる。 少し自分より高い位置にいる凪を見上げたが視線が合わず、彼は口を固く結んで視線を下げていた。 一瞬ぐっと堪えるような表情をした後すぐにいつもの笑顔に戻る。 「上手くいくといいな!」 にかっという効果音が似合う笑顔でそう言うと肩を少し強く一回叩かれた。 その表情を見た途端、心臓が鷲掴みにされたような感覚に陥る。 あー、なんで考えなかったんだろう。 今になって後悔が押し寄せてくる。 とにかく咲良のこと、自分のことばかりを考えて動いていた。 タイムスリップしたんだ、それくらいの気持ちで行かないとって思っていたけど、周りの人間がどうなるかまでは頭が回っていなかった。 自分の過去を変えるということは、もちろん周りにも影響することで。 本来ならここで凪は咲良と付き合い始めてたんだ。 その機会を奪ったら凪はどうなる? 「晴?どうした?」 凪からの問いかけに何を言うべきか、分からなくなって。 「ごめん。本当にごめん。」 口からはその言葉しか出なかった。 「だーから!謝るなって!俺何も迷惑かけられてないし!」 またも笑顔で答えてくれる凪に、考えるよりも先に言葉がついて出た。 「凪、お前、咲良のこと」 「じゃあ!アイスな!!アイス奢れ!」 言葉を遮られる。 笑顔だけど目だけはしっかり意思を持ったような、もうこれ以上は何も言うなという圧を感じて口籠ってしまう。 まだまだ溢れてくる感情に無理矢理蓋をして、俺は凪の言葉に頷くしかなかった。
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