12 years old

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 厚めのコートを着て、手袋を付けて、ランドセルを担いで美優は家を出た。  10センチ以上雪が積もったアスファルトの上に、いくつかの足あとがあった。大きなものが多く並ぶ中に美優は子供のものと思わしき足あとを見つけた。  この足あとの正体を美優は知っていた。  これは、真田優斗の足あとだ、そう思いながら美優は、その足あとをなぞるように足を重ねて歩く。  この近辺で同じ小学校に通っているのは美優を除くと、優斗しかいない。子供の足あとは優斗しかありえなかった。  いつも遅刻ギリギリで家を出る美優とは異なり、時間に余裕をもって家を出る優斗の足あとが必ずアスファルトの上にできている。この足あとをなぞることが美優は楽しかった。    10分ほど歩いて美優は登校班の集合場所に到着する。他のメンバーは既に到着していた。「ごめんごめん」と美優が近づいていくと、 「美優、遅いよ」 「こんな寒いんだから早く来てよー」 「もう時間過ぎているし、行くよ」  とメンバーは口々に言った。美優が遅刻に際どい時間に到着することは日常茶飯事であるため、メンバーも言葉にはするものの本気で怒っている者はいなかった。  美優は茶色のコートを着た優斗を見つけて、「おはよ」と声をかける。 「遅刻ギリギリだぞ」 「だってこんな雪なんだよ? フツーは家から出たくないよ」 「学校が休みじゃないんだから、来るのが『フツー』」 「私、勉強好きじゃないので」 「好き嫌いの問題じゃないだろ」  冷たい目で優斗は美優を見た。  大袈裟にため息をつきながら美優は優斗の目を見た。 「相変わらず優斗は真面目だなぁ。はいはい、先に来ててエライエライ」  そう言いながら優斗の軽く2回叩いた。子供をあやすかのような扱いに不満を覚えた優斗は「はやく行くぞ」と言って美優の手を軽く振り払おうとしたが、その動きを途中で止めた。 「なに?」  動きを止めたことを不思議に思った美優が優斗に尋ねる。 「オマエ、いつからそんなでかいんだよ」 「え?」  そう言えば、と美優は心の中で呟く。美優の目線は優斗より少し上に位置していた。 「ヤな感じだな」  そう言いながら優斗は登校班の先頭に立ち、班長としてメンバーに声を掛けて歩き始めた。  幼い頃からずっと同じぐらいの身長だった二人だったが、6年生になり、美優は優斗の身長を大きく抜くようになっていた。その差は10センチ近くになろうとしていた。 「つまんないこと気にするんだから」  美優は独り言を言いながら副班長として、班の一番後ろに続いた。
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