1302人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
第一話
*
(いや、もう、まじでむかつくんだが、あいつ!!)
笠原桃李は家への帰宅途中でむかむかと思い出しギレをしていた。原因はこの前から始まった仕事である。
新しいプロジェクトに健康食品の開発リーダーとして参画するまでは渋々受け入れたのだが……全体を取り仕切っているのが同期の花岡瑞希であるのが問題だった。
花岡は確かにとても優秀だ。キックオフミーティングの取り仕切りは完璧。営業側からいろんな事業を巻き込んでの企画ということで、彼の方から企画説明がなされた。しかし、開発側としての笠原がいろんなデータを気にするのが気に障ったらしい。数回の会議でお互いに「仕事のスタンスが合わない」のはよくわかっていた。毎回二人で議論をしてしまう。
笠原たちの勤める会社は体育会系の感覚論が強く、なかなかロジカルな議論がしにくい。他のメンバーはやる気に満ちあふれていたし、そんな中、序盤から笠原のデータに対する質問やツッコミは正直鬱陶しかったのだろう。
(まあ、ほぼ新規案件で数字示せってのもナンセンスだってわかってるけど!けど!あんな言い方しなくても!)
『笠原、お前はそんな細かい数字がなければ動けないのか?』
(うるせええええええ!根拠がなければビジネスとして動けねえだろ!理系と文系の違いでの偏見だろ。がっばがばの頭してんじゃねえ……!)
今日の会議での発言と相手の顔を思い出してイライラが増す。そう思う自分側にも営業への偏見があることは棚上げして、とにかく今までの鬱憤がたまっていたものもあり、むかつきが収まらない。相手が優秀なことがわかっているからこそ尚更だ。
(あー、やばい。ストレスたまってんなー……)
普段であれば、このぐらいのことでむかつきはしないのだが、つい、その後も花岡と議論が白熱してしまった。周りを巻き込んでしまったという自己嫌悪も強いし、そもそも……
(俺に開発は向いてないんだよ。早く外してほしい)
今のポジションに不満があるのも手伝って、今の仕事にモチベーションが上がらない。はあ、と大きなため息をついた笠原は、よし、と気合を入れて「ストレス発散」に向かうことにした。
最初のコメントを投稿しよう!